第36回表面分析研究会(2月3−4日)でのWG活動について

SASJ WG担当     
永富隆清(大阪大学)


 これまでの表面分析研究会(SASJ)の研究会では,ナイトセッションが実施される6月の研究会を中心に, バックグラウンド,ToF-SIMS,XPSなどの各プロジェクトで討議を行い, ラウンドロビンテスト(RRT)の実施やデータの解析,標準化などを行ってきました. 昨年度から総てのプロジェクトをワーキンググループ(WG)と改名するとともに,各WG活動を更に活性化し, これまで独立して活動してきた各WGをSASJ設立の目的である標準化活動や人材育成の場として更に発展させるべく, WG運営方針を変更してきました.

 今回は新しい試みとして,これらWG活動を中心とした研究会を企画することにしました. 以下のような,これまでとは異なる趣旨も取り入れてWG運営を行います. なお,以下,SASJの第一の設立目的である「標準化」というキーワードを用いています. 従来は「標準化」=「国際規格(ISO)」という捉え方がなされる場合が多かったですが, ここでは基本に立ち返り,「標準化」=「現場で役立つ技術や情報の共有化」という意味で用いています. 「標準化」という言葉に抵抗をお持ちの方もおられるかと思いますが, 「現場で役立つ技術や情報の共有化」という観点で,是非積極的に討議へご参加いただければと思います.

(1) 研究会の初日に,従来通りのWG活動の紹介を行うのに加えて,各WGの活動に関連する文献紹介等を行い, 各WG内だけでなくSASJ全体として,各WG活動の基本となる情報や技術などを共通化(標準化)することを図ります. また,全体討議の時間も長く確保し,各WGでの討議へSASJ全体の方針や該当WGへ参加できない方々の意見が反映されるようにします.
(2) 各WGでの討議はこれまでナイトセッションとして実施されてきましたが,今回はデイセッションとして実施します. 各WGの討議事項(予定)に加えて,(3) で概略を紹介した文献等の勉強会も実施します. また,最初の全体討議で出た意見なども取り入れながら,次のステップへ向けた討議を行います. 従来のようなナイトセッションの会場は確保しておりませんが, 必要な場合は,懇親会や懇親会後の時間を討議時間としてご利用ください.
(3) 研究会2日目のWG報告と全体討議では,充分な討議時間を確保することで,各WGでの討議内容を報告するだけでなく, WGの枠を超えたSASJ全体としての観点で討議を行います.

 このように,各WGでの討議では,これまでよりも一歩踏み込んだ討議や,基礎事項の勉強会などを行います. また,これまでは最も興味のある1WGへの参加と討議しかできませんでしたが, WG活動をSASJ全体の活動と捉えて討議するとともに,全体討議の時間を確保することで,他のWGでの討議へも参加する, あるいは他のWG活動の情報を得ることができるようにと考えました.

 以下,今回の研究会で活動を予定している各WGの討議等の内容をまとめます. 事前にご確認いただいた上で研究会へご出席いただければと思います. また,各自が討議に参加する1WGにこだわらず,WGの枠を超えて「実用表面分析」を目指した 「現場で役立つ技術や情報の共有化」について,質問やコメントなど,活発な議論が行えればと思います.

 なにぶん新しい試みであり,運営も試行錯誤しながらになると思われますが, 是非積極的に討議へ参加していただければと思います.

ToF-SIMS WG
(1) 研究会1日目のWG紹介
 ・ToF-SIMS WG活動の紹介
 ・文献紹介 [Surface and Interface Analysis 42 (2010) 129-138].
 伊藤博人(コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社)
 大友晋哉(古河電工株式会社)

(2) 研究会1日目にWGで討議する事項(予定)
 1. RRT09の結果紹介:大友
 2. RRT10のテストデータの紹介:伊藤
 3. 上記1, 2に関する討議とRRT10の進め方について議論
 4. 論文紹介 [Surface and Interface Analysis 42 (2010) 129-138].

(3) 2日目の全体討議と報告
 大友晋哉(古河電工株式会社)

(4) 連絡事項
 SASJ ToF-SIMS WGではToF-SIMS測定の標準化を視野に入れ,最表面に存在する化学種の同定をテーマとして検討を進めています. ToF-SIMSの標準化の動向について,NPL(英国)を中心に先行して進んでいる研究の成果を知り,WG活動を活性化していきたいと考えています. そこで [Surface and Interface Analysis 42 (2010) 129-138] を題材に勉強会を実施します.

XPS WG
(1) 研究会1日目のWG紹介
 ・XPS WG活動の紹介
 ・文献紹介 [S. W. Gaarenstroom and N.Winograd, J.Chem. Phys., 67 (1977) 3500.]
 當麻肇(株式会社日産アーク)
 高野みどり(パナソニック エレクトロニックデバイス(株))

(2) 研究会1日目にWGで討議する事項(予定)
 1. これまでのXPS-WGにおける測定結果に関する討議
 2. XPS-WGの今後の課題(試料)に関する討議
 3. 次回研究会に向けた予備実験の検討

(3) 2日目の全体討議と報告
 當麻肇(株式会社日産アーク)

(4) 連絡事項
 これまで行ってきたAg酸化物のXPSピークのケミカルシフトを中心に討議する予定です.

Background WG
(1) 研究会1日目のWG紹介
 ・バックグラウンドプロジェクトの終了について
 ・これまでの活動の総括
 ・オージェ電子絶対量計測 WGの発足について
 田沼繁夫(物質・材料研究機構)

(2) 研究会1日目にWGで討議する事項(予定)
 これまでのバックグラウンドプロジェクトの発展として「オージェ電子絶対量計測 WG」を発足する.本WG発足に向けて以下について討議する.
 ・オージェの絶対計測は何処まで進んだか?
 ・残された課題は何か?

(3) 2日目の全体討議と報告
 ・弾性散乱ピーク,オージェピーク,二次電子ピークの計測について
 ・各種ピークの計算について
 田沼繁夫(物質・材料研究機構)

(4) 連絡事項
 バックグラウンドプロジェクトは前回研究会で終了しました. その発展系として「オージェ電子絶対量計測 WG(仮称)」を立ち上げます. 絶対量計測とは何か?計測と理論計算の両面から,オージェ電子,二次電子,弾性散乱ピーク, エネルギー損失ピークの絶対量計測に迫りたいと考えます. 幸いにして,後藤先生の絶対AESスペクトルがありますので(上記の全ての情報を含んでいます), このデータの読み方・使い方,自分のデータとの比較,理論計算との比較から始めたいと思います.
 バックグラウンドプロジェクトと重なるところが多いのですが, WG発足にあたり,新たな気持ちで「表面電子分光法の絶対計測の夢」を追いかけたいと思います. 是非,ご参加下さい.

Depth Profiling WG
(1) 研究会1日目のWG紹介
 ・現在までの活動報告
 ・関連文献の紹介 [Sekine et al., Surface and Interface Analysis 13 (1988) 7-13]
 石津範子(パナソニック株式会社)

(2) 研究会1日目にWGで討議する事項(予定)
 ・高感度分析のためのイオン銃アライメントの情報の共有(標準化)
 ・WG参加者からの課題抽出
 ・界面位置,界面幅,深さ分解能の定義について

(3) 2日目の全体討議と報告
 石津範子(パナソニック株式会社)

(4) 連絡事項
 「Depth Profiling(深さ分析)」をキーワードとして活動を開始したばかりのWGです. 現在は,AESを用いた高感度高深さ分解能スパッタ深さ分析を中心に活動を行っていますが, 分析法などにとらわれず,広い意味での「深さ分析」について討議していきたいと考えています. そのためにも,SASJ会員の皆さんが日頃の業務で出くわす「深さ分析」に関する課題を抽出して, 課題の解決,情報の共有など,分析現場に役立つ活動を行っていきたいと考えています.
 また,「深さ分析」に関連して,現在ISOで進められている「界面位置,界面幅,深さ分解能の定義」について, 日本の分析現場の意見を反映した「実用的な定義」となるように議論したいと思います.
 今回は,これら討議に加えて,高感度AES分析の基礎となる文献 [Sekine et al., Surface and Interface Analysis 13 (1988) 7-13] についての勉強会も企画しています.